「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第15回 <2003/11/21>
山口裕子 (一橋大学大学院社会学研究科)
「現代インドネシアにおける<歴史の創造>をめぐって: ブトンの過去の語り方」

 第15回定例研究会を下記の通り開催します。今回は、一橋大大学院社会学研究科の山口裕子さんが、インドネシア東部のブトン島における、村落レベルでの過去について語り、あるいはブトン史の「創造」と、それを契機とした近年のブトンの「伝統的」社会制度の復興について報告します。研究会終了後、懇親会を行いますので、こちらにも振るってご参加下さい。

●日時

2003年11月21日(金) 16:00−18:00

●場所

京都大学東南アジア研究センター 東棟2F教室

●話題提供者

山口裕子(一橋大学大学院社会学研究科)

●発表要旨

 1998年にスハルト大統領が退陣したあとのインドネシアでは、民主化要求の高まりに連動して地方分権の動きが活発化してきている。この動きは、行政面や政治面だけに限定されず、文化や歴史の語り方においても見られる。
 ブトンはインドネシアの東南スラウェシに位置する島で、この島を核に14世紀中ごろから1960年までスルタン国ブトンが形成されていた。マルクと南スラウェシを中心とする東西の強大な勢力の影で翻弄されてきたブトン社会は、これまで「インドネシア史」の舞台にも殆ど登場したことがない。しかし、今日ブトンの人々は、日常的なコンテクストにおいて盛んに「歴史創造(history making)」を行っている。それはブトンより「メジャー」な社会の歴史をモデルにし、そこからさまざまなモチーフを借用しながら、メジャーな歴史との接点を主張して、その中に自らの歴史を参加させていくという特徴をもつ。
 本発表は、さまざまな意味でブトン社会の中央と周辺に位置し、各々異なる階層からなる2つの村におけるフィールドワークの成果に基づいている。村レベルの歴史創造の実践を、それぞれの生活空間や生業のサイクルとの関わりとともに紹介し、人々にとって今日「過去について語る」ことがいかなる営みであるかを検討する。さらに、2つの村落社会における歴史創造の比較検討をとおして、かつてのスルタネイトを踏襲した「ブトン」という枠組みが、双方の社会で想像されつつあること、そしてその中に、旧来の階層関係をはじめとするスルタネイト時代の諸制度が復活する萌芽的状況が見られることを示したい。

*この研究会は原則として奇数月の第三金曜日に開催されます。なお、7月は夏休みとし、研究会は開催しません。研究会の案内はメールを通じて行っています。お知り合いの方、とくに学部生・院生・若手研究者に、このメールを転送するなどして、案内リストへの参加をお勧めいただければ幸いです。案内リスト参加希望者の連絡先は nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp です。


[世話人]
加藤 剛(京大大学院AA研究科)
林 行夫(京大東南アジア研究センター)

[事務局]
長津一史(京大大学院AA研究科)nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp
速水洋子(京大東南アジア研究センター)yhayami@cseas.kyoto-u.ac.jp