「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第21回 <2001/1/21>
中川 敏 (大阪大学大学院人間科学研究科)
「妖術師と正義論」

 第21回定例研究会を下記の通り開催します。今回は、大阪大学の中川敏氏が、インド ネシア、フローレス島のエンデにおける呪術と人格について報告します。多くの方の参加をお待ちしています。研究会終了後、懇親会を行いますので、こちらにも振るっ てご参加下さい。

●日時

2005年1月21日(金) 16:00−18:00

●場所

京都大学東南アジア研究所 共同棟3Fセミナー室

●話題提供者

中川 敏(大阪大学)

●発表要旨

 フローレス島、エンデにおいて、儀礼は禁忌(pir'e)に満ちている〜家の外に出てはいけない、話をしてはならない、唾を吐いてはならない、咳をしてはならない、おならをしてはいけない、排尿・排便をしてはいけない。これに違反した者は、(1)不慮の死(mata rimbo)をとげる、(2)体中血だらけになる皮膚病(neka raa)になる、(3)盗みをする(naka)、(4)婚外性交をする(p'erha)、(5)呪術師(marhi)になる、(6)妖術師(ata porho)になる、という。 わたしは、禁忌とその違反に対する「天罰」をノートにとって、あとは何も考えずにいた。そのとき隣にいた調査者は、しかしながら、次のように疑問を提出する〜「不慮の死や人知を超えた病気と考えられている皮膚の難病が「盗みをする」ことや「婚外性交をする」という行為と一緒にされているのかという問題であった。このような事象を何らかの意味で同等とみなす見方は、明らかに、主体性を中核とする「人間」観とはなじまない」(青木恵理子近刊)。考えてみれば、いかにもの疑問である。彼女はさらに続ける〜「見方をかえれば、その様な人間観をもつ視点こそが、それとは明らかに異なる人間観に裏打ちされた事象を、異文化として取り上げるに値する点としている、ということができる」と。この発想は、わたしの『民族学研究』に発表した論文(「未開の人格、文明の人格」)に繋がる考え方である。今回の発表は、当該の論文 ---「人格」について、(1)感情と(2)動機から考察した--- の、いわば第3部である〜人格について「性格」という面から考察していきたい。

*この研究会は原則として奇数月の第三金曜日に開催されます。なお、7月は夏休みとし、研究会は開催しません。研究会の案内はメールを通じて行っています。お知り合いの方、とくに学部生・院生・若手研究者に、このメールを転送するなどして、案内リストへの参加をお勧めいただければ幸いです。案内リスト参加希望者の連絡先は nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp です。


[世話人]
杉島 敬志(京大大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
林 行夫(京大地域研究統合情報センター)

[事務局]
速水洋子(京大東南アジア研究所)yhayami@cseas.kyoto-u.ac.jp
長津一史(京大東南アジア研究所)nagatsu@cseas..kyoto-u.ac.jp