「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第12回 <2003/03/28>
中野麻衣子 <一橋大/学振特別研究員>
「『文化のインヴォリューション再考』: バリ文化の表象と消費を中心に 」

 第12回定例研究会を下記の通り開催します。今回は、一橋大・学振特別研究員の中野麻衣子さんが、国際的観光地という文脈のなかで意識化され、内的にも再編成されてきたバリ文化の動態について報告します。多くの方の参加をお待ちしています。研究会終了後、懇親会を行いますので、こちらにも振るってご参加下さい。

配布資料

●日時

2003年3月28日(金) 16:00−18:00

●場所

京都大学東南アジア研究センター 東棟2F教室

●話題提供者

中野麻衣子(一橋大・学振特別研究員)

●発表要旨

 インドネシアのバリ社会の今日的状況は、1970年代から、「文化のインヴォリューション」という概念で説明されてきた。文化を「売り」に観光地として発展する中で、バリはますますバリらしくなっているという議論である。これはバリの「バリ化」とも呼ばれる。1980年代、90年代と、バリの観光産業は飛躍的な成長を遂げた。この中で、「バリ文化」の中心的要素とされる芸能や儀礼は、かつてなかったほどに活性化している。だがこうした現状については、自文化意識の覚醒や文化的自己主張以上の説明はこれまでなされてこなかった。従来の文化のインヴォリューションをめぐる議論は、いわば対外的な文化表象を特権化した議論であった。だが対内的な文化表象にも着目するとき、今日の「バリ化」は「インヴォリューション」という概念では捉えきれない様相を帯びてくる。国際的な観光産業の場で形成された「バリ文化」は、今やバリ人自身の社会生活に取り込まれ、顕示的消費の対象とされる中で、新たな価値を与えられている。
 本報告では、1999年以降収集してきたフィールドデータをもとに、こうしたバリ社会におけるバリ文化の表象と消費の特徴、その社会的条件を説明しつつ、今日の「バリ化」の様相を明らかにしていくとともに、それを支えているバリ住民の「近代」観を描き出していきたい。

*この研究会は原則として奇数月の第三金曜日に開催されます。なお、7月は夏休みとし、研究会は開催しません。研究会の案内はメールを通じて行っています。お知り合いの方、とくに学部生・院生・若手研究者に、このメールを転送するなどして、案内リストへの参加をお勧めいただければ幸いです。案内リスト参加希望者の連絡先は nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp です。


[世話人]
加藤 剛(京大大学院AA研究科)
林 行夫(京大東南アジア研究センター)

[事務局]
長津一史(京大大学院AA研究科)nagatsu@asafas.kyoto-u.ac.jp
速水洋子(京大東南アジア研究センター)yhayami@cseas.kyoto-u.ac.jp