「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第64回研究会<2014/5/30>
杉島敬志氏
東インドネシアにおける狡知と暴力を理解するための複ゲーム状況論


第64回「東南アジアの社会と文化研究会」を下記の通り開催します。 オープンな研究会ですので、ご関心をもたれた方はぜひお気軽にご参集くださ い。事前登録等の手続きは必要ありません。

●日時

2014年5月30日(金)16:00~18:00(15:30開場)

●場所

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
総合研究2号館(旧・工学部 4号館)4階会議室(AA447)

●話題提供者

杉島敬志氏 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

●発表要旨

配布資料

 今回、話題提供させていただくのは、報告者が調査するフローレス島中部でもっとも大きな首長国 リセLise(人口約18,000)と、ティモール島南西部の首長国ナブアサNabuasa(人口約25,000)との比較研究である。ナブアサの成立史は、リセの成立史と大きな類似性がある。特に注目されるのは、首狩をともなう戦争や、詐欺まがいの悪賢い手口で先住者を殺し、追い払うことによって首長国が成立したという口承史や歴史観が首長層、平民層を問わず、広く知られており、そのことを誇りに思う人々がいることである。リセでは、その領地を一代で急速に拡大した英雄的祖先が悪の象徴として忌み嫌われる妖術者だったとされる。この点で、リセとナブアサは、世界を破滅させた洪水を生き延びた(と神話のなかで語られる)者の子孫が首長として権威を保持するフローレスやティモールの他の首長国とは大きく異なる。リセとナブアサは、外来の商人と古くから奴隷や白檀の交易をおこなっていた地域であり、本報告は、この歴史的背景をふまえ、称賛されるとともに(妖術)告発の対象にもなる狡知や暴力の不安定な状態を理解することを試みる。この試みを可能にするために「複ゲーム状況」という理論概念を導入する。



2014年度世話人代表・研究会事務局
小島敬裕 (京都大学東南アジア研究所)
kojima(at)cseas.kyoto-u.ac.jp
加藤裕美 (京都大学白眉センター)
kato(at)cseas.kyoto-u.ac.jp