「東南アジアの社会と文化研究会」のお知らせ

第63回研究会<2014/1/24>
加藤裕美氏
「野生性」の再考:マレーシア・ボルネオにおける動物に対する知識と実践


第63回「東南アジアの社会と文化研究会」を下記の通り開催します。 オープンな研究会ですので、ご関心をもたれた方はぜひお気軽にご参集くださ い。事前登録等の手続きは必要ありません。

●日時

2014年1月24日(金)17:30~19:30(17:15開場)
※本研究会の通常の時間帯と異なります。ご注意ください。

●場所

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
総合研究2号館(旧・工学部 4号館)4階会議室(AA447)

●話題提供者

加藤裕美氏 (京都大学白眉センター)

●発表要旨

 1960年代より東南アジア島嶼部では大規模な森林伐採やプランテーション開発 により、自然環境が大きく変化した。こうした森林環境の劣化への対策として、 持続的な森林管理や野生動物の保全が実施されている。持続的な森林管理では、 低インパクト伐採や認証木材の生産がおこなわれ、野生動物の保護や保全のため には、禁猟法が制定された。そのため、森の中の動物を自由に狩猟し、食し、交 易することが禁止されるようになった。本報告では、こうした国家レベルでの野 生動物の保護や保全が、ローカルなレベルでどのように解釈され、認識され、実 践されているのかを検討する。なかでも、人々が従来行ってきた野生動物の狩猟 や交易、食習慣とどのような齟齬があるのか、その要因について考察する。
 本報告で対象とする、マレーシア、サラワクにおいては、1998年に禁猟政策が 実施された。また、同時期には、狩猟に頼らない食料自給の一環として、政府に よる養鶏プロジェクトが内陸部の村々で導入された。しかしながら、人々は従来 からおこなってきた野生動物の狩猟を簡単にやめたり、飼育された動物を食する ことはなかった。それは、人々の食行動における野生性の重視や野生動物を食す ることによる健康観、生命観と大きくかかわっているためだ。
 本報告では、こうした野生性の重視や健康観が、近年の土地利用改変に起因す る野生動物の生息状況の変化、野生動物マーケットの影響によりどのように変容 しうるものであるのか、議論していきたい。また、近代医療へのアクセスの向上 や村外労働の増加によるライフスタイルの変化など、人々の社会環境の変容が、 野生動物に対する知識や認識、実践にどのように反映されうるのか、考察したい。



[研究会世話人/事務局]
小林 知 (京都大学東南アジア研究所)
kobasa(at)cseas.kyoto-u.ac.jp